お団子理論と経済対策

去る5日、①災害からの復旧・復興、②経済の下振れリスクへの備え、③東京五輪後の経済活力維持・向上を柱とする総事業規模26兆円、財政支出13.2兆円経済対策「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を策定しました。

ただし、いわゆる真水は7.6兆円(上記資料38頁注1)に過ぎませんので、経済対策をとりまとめた内閣府もGDPの下支え効果を1.4%と控えめに見積もっています。

消費増税や東京オリンピック・パラリンピックのような意図的な需要増を作り出す政策には反動減はつきものなので、そもそも、多額のお金と資源を割いてまで需要の平準化を行うのであれば、消費増税も東京五輪も実施しなければよいのです。

しかも、一過的なイベント(消費増税や東京オリンピック・パラリンピック)にともなう突然の需要急増のあとには、実態以上に反動減が大きく見えてしまうのです。

これを小峰隆夫大正大学教授が提唱されているお団子理論で確認してみましょう。

いま、毎日お団子を10個ずつ食べる人を想像してください。あるとき、お団子をいつもより2個多く食べてしまったので、その翌日は団子を8(=10(いつもの団子の数)-2(前日に多く食べた団子の数))個で我慢します。そして、その翌日からはいつも通り食べる団子を10個に戻します。このとき、団子を多く食べたのが駆け込み需要に相当し増加率は+20%で、団子を我慢したのが反動減に相当し減少率は▼33.3%となり、駆け込み需要による消費の盛り上がりよりも、反動減による消費の盛り下がりの方が大きく見えていることに注意してください。しかし、駆け込み需要と反動減を均してみれば、どちらのケースも団子を合計20個食べたことには変わりなく、実体経済は不変です。したがって、反動減が大きいからといって敢えて需要追加策を取る必然性が全くないことがおわかりでしょう。

しかも、内閣府のGDPギャップの推計を見れば、2019 年7-9月期+0.3%と、2019 年4-6月期+0.5%からプラス幅は縮小していますが、需要超過となっているのですから、やはり需要追加の必要性は薄いのです。

もう一度、小峰先生のお団子理論に戻って考えると、先の例では団子を8個に減らした後、すぐに元通り10個食べると考えていたのですが、現在の日本経済の状況に照らし合わせて考えると、問題は、元通り10個食べるのではなく、1個減らして9個しか食べなくなることです。つまり、消費税増税の影響により購買力が低下したため、元の消費軌道には回復していないことこそが問題なのです。これは所得が足りないからで、所得を増やすには、需要を積みますのではなく、生産性を上げる以外方法がないのです。

そういう意味では、今般の経済対策に生産性を押し上げるための施策がチラホラ盛り込まれた点は評価できると言えるかもしれませんが、そもそもは経済対策で講じるのではなく、中長期的な政策パッケージとして立案すべきだと思います。